【遊戯王ARC-V】エクシーズ次元組についての雑感
遊戯王アークファイブが放送終了して今年でもう四年になる。そろそろ自分の中での感想も固まってきたのでそれをここに記そうと思う。
はじめに〜遊戯王アークファイブについて〜
まずタイトルのエクシーズ次元組について語る前に、遊戯王アークファイブが置かれている現在の状況について整理しよう。
概ね放送終了当時の状況とはそこまで変わってはおらず、相変わらず検索をかけようとするとサジェストは罵詈雑言の数々であり、未だに評価の低いタイトルであると言わざるを得ないのが現状である。しかしTwitter等を中心にファンの間では少しずつ再評価される動きもやや見られ、VRAINSの放送終了、そしてセブンスの放送発表と共に、アークファイブを巡る状況も少しずつ変化してきている。(喉元過ぎれば…という可能性も否定はできないが)
何故エクシーズ次元組を語るのか
私がこのエクシーズ次元組に今回着目した理由は、主に二つある。まずこの反逆組がアークファイブの主人公遊矢に匹敵する登場シーンの多さであり、アークファイブという物語の構造を深める要素を生み出す最も大きな材料の一つとなっている点、そしてもう一つが主人公遊矢との対比される場面が多く見られるからである。それ故に、アークファイブを語る上では欠かせない点であると判断した。
まずはエクシーズ次元組の概要、登場人物、歩みについて簡単に説明するが、もう知っているという方は「本題」まで飛ばしてくれて問題ない。
エクシーズ次元組についての概要
エクシーズ次元とは、主人公遊矢たちの暮らすスタンダード次元とは異なる世界に存在する、エクシーズ次元と呼ばれるエクシーズ召喚を使う住人たちが過ごす世界である。
彼らは平和だったある日、融合次元のアカデミアによる侵略を受け、首都ハートランドは徹底的に破壊され、住民の多くはカードに封印された。僅かに生存した人々はアカデミアへの反抗組織レジスタンスを結成、融合次元との対立を他の次元にも波及させていく。
登場人物
ユート
エクシーズ次元の遊矢シリーズの一人。心優しい性格で、デュエルで人を傷つけることをもうしたくないと考えているが、同時にアカデミアを深く憎んでおり、遊矢の暴走のきっかけになる事も多かった。序盤で遊矢の中に統合され肉体が消滅した事で、黒咲はますますその怒りをたぎらせ、その怒りを融合次元のスパイであるデニスにぶつけることになる。平和だった頃は黒咲隼の妹、瑠璃と親密だった様子。
黒咲隼
序盤でユートが消滅し、エクシーズ次元まで目立った出番もないため、彼が実質的なエクシーズ次元の主人公とも言える。故郷を滅ぼし妹を攫ったアカデミアを憎悪し、そのリーダーの息子である赤馬零児の経営するLDSの関係者というだけで次々とカードに封印し、それを止めようとするものは親友のユートでさえ「邪魔立てするなら、貴様も倒す!」とまで言ってしまう。まさにエクシーズ次元の怒りの体現者であり、その暴走はカイト戦まで続くことになる。
黒咲瑠璃
黒咲隼の妹。彼女が融合次元のユーリに誘拐されることからの物語が始まると言ってもいい重要人物。彼女の存在をめぐって、エクシーズ次元は動いていくことになる。
カイト
ゼアルからのゲストキャラクター。家族をカードにされた怒りをアカデミアはぶつけ、かつての黒咲のように暴走していたが黒咲の体を張った説得により、仲間に加わる。そして傷ついた黒咲の代わりに融合次元に向かうことになる。ユートと黒咲とは昔からの友人らしく、遊矢がダークリベリオンを使った際には「まさか、奪ったのか!」と怒りと驚きが混ざったような反応をしていた。
神月カレン
ゼアルの神月アンナをモチーフにしたと思われるキャラクター。明るい性格で仲間意識は強いのだが融合次元を憎むあまりか、排他的な感情も強く遊矢をよそ者として始めは信頼せず、ランサーズにも不信感を抱いていた(のちに遊矢たちを仲間と認める)
笹山サヤカ
黒咲瑠璃の親友。瑠璃が攫われた日に瑠璃とユーリのデュエルを見ていたが、恐怖から瑠璃を助けられずデュエル中ずっと影に隠れていた。カイトの手でカード化されそうになった黒咲を助けたい一心でその行いを懺悔する。そしてそれはカイトの心を動かし、黒咲はカード化を免れた。
レジスタンスの歩み
レジスタンスの一員であり、恐らくは中心的的存在であったと思われる黒咲の妹である瑠璃が突如としてアカデミアの遊矢シリーズであるユーリに誘拐される。それに激昂した黒咲隼は「アカデミアのリーダーであるプロフェッサーの息子である赤馬零児を捕え、瑠璃との交換材料にするため」にひとりスタンダード次元に飛び、赤馬零児が社長を務めるLDSのトップチームを次々と襲撃、カードに封印し、LDSに送りつけることで赤馬零児をおびき出そうとする。
それを止めるためユートもエクシーズ次元からスタンダード次元にやってくるが、上記で述べた通り、黒咲はユートさえ邪魔をするなら貴様も倒すと言い張る。その後柚子を瑠璃と勘違いした黒咲はユートにキツイパンチをもらい気絶、ユート共々、柚子のブレスレットの意図しない空間移動により難を逃れることになる。
本題
さて、ここまでは概略的にエクシーズ次元組の解説をしたが、ここからはエクシーズ次元組の遊戯王シリーズにおける特徴について述べていく。
エクシーズ次元組の特徴
エクシーズ次元組の特徴として、それまでの遊戯王シリーズにはなかったタイプの陰鬱さが存在する。滅んだ文明、殆どが死んでいるインフラ、散乱する戦いの傷跡、ゼアルで描かれた平和の象徴であるハートランドは徹底的に破壊され、デュエルは恐怖と争いのの象徴となる。
この時点ではよくわからない自分語りだった黒咲のこのセリフも、本編終了後に見ると「かつて故郷で行われていた平和なデュエルを思い出す」シーンであると同時に「デュエルを戦争の道具にせざるを得なかった黒咲が、戦いの最中に舞網チャンピオンシップという形で再び平和な、娯楽としてのデュエルを行なっていること」へのアイロニカルな表情であることがわかる。
そしてエクシーズ次元組を語る上で欠かせないのが、平和だった頃の回想シーンである。
(本編中での黒咲やユートの表情とはまるで違う、優しげな彼らの素の表情がうかがえる)
これらの平和だった頃の回想シーンがあるが故に本編でのレジスタンスとしての戦いが一層引き立つようになっている。
主人公でもライバルでもないキャラクター達にこれだけ多くの回想シーンがあるのは遊戯王では珍しく、制作側も黒咲を筆頭とするエクシーズ次元組を物語における重要な要素と見なしていたことがうかがえる。
デュエル面でもエクシーズ次元組はそれまでにの遊戯王にはないものが存在する。それは個々の戦術の特徴が本編で明記されている点である。
まず黒咲隼はRUMを筆頭に魔法罠の扱いに長けているという描写が入る。
そしてユートは本編で行なったように魔法罠モンスターを巧みに操り、黒咲と同じくRUMを操る。
カイトは光波龍をエースとしてそれを中心にしっかり据え、それを守りながらデュエルを進める。
いずれもキャラクターとしての戦いのコンセプトがしっかり決められた上でデュエルを行なってるため、強者の風格が出ていることも特徴として上げられる。
レジスタンスの絆
アークファイブは遊戯王シリーズの御多分に漏れず、絆への描写がある。
エクシーズ次元組はアカデミアという共通の敵がいるが故に、団結しており、仲間への信頼も厚い。デニス戦では黒咲はユートを唯一無二の親友と呼び、非常に仲間として信頼いたことが伺える。エクシーズ次元編ではそんなレジスタンスに崩壊の危機が訪れる。カイトが袂を別つのである。
カイトの怒りに焦点が当てられ、数少ない生き残りであるにも関わらず、袂を分かち、それを見兼ねた黒咲がデュエルすることになる。
黒咲が仲間であるユートへの想いを吐露する場面である。仲間がいることがイコール自分の存在証明になっていると黒咲は説く。
それまでの一人で暴走していた黒咲とは違い、失った者の思いも背負った上で仲間と共に戦う。という新たな境地にたどり着いた瞬間である。
そして本編は遊矢の中にユートがいることが明らかになるシーンになり、こう続く
こうなるともはやレジスタンスの絆というより黒咲とユートの絆という感じがしてくるが、黒咲の成長、そして二人の友情を感じさせる。
黒咲隼のラストデュエルについて
ここではエクシーズ次元組、主に黒咲隼のラストデュエル、ラストシーンについて述べていく。まず一つ確かなことは、「黒咲は彼のラストデュエルで希望を得た」ということである。よく視聴後感想で妹と親友を失った男などという感想を見ることがあるが、それは違うと断言したい。
黒咲は遊矢とのラストデュエルの直前までユートと瑠璃が完全に消滅したと思っていた。しかし遊矢とのラストデュエルが決着する瞬間、遊矢に中にいたユートの魂を感じ取り、事実ユートは遊矢の中に存在し、その後意識が復活する。黒咲は真っ先にそれを感じ取り、瑠璃も同じように柚子の中に生きていると考えた。それ以上でもそれ以下でもないが、少なくとも彼は遊矢とのデュエルで、失ったと思っていたものの生存を確認できたのである。これをどう受け取り間違えたら妹と親友を失ったなどという感想が出てくるのか聞いてみたいものだ。
結びに
ここからは想像でしかないが、少なくとも黒咲のラストデュエル回「終わりなき反逆」というタイトルにある通り、彼の戦いは終わらないのだろう。ユートも瑠璃も遊矢と柚子の中で生きていてくれればそれでいいのか(恐らくユートが何度かやったように人格交代と肉体交代はできると思われる)もしくは本当は二人ともバラバラの状態でいて欲しいのか、それは本編では語られることはなかったが、恐らく彼のことだ、何があっても鉄の意志と鋼の強さで切り抜けていくのだろう。
最後に、終わりまでまでこのような冗長な駄文を読んでくださった方に感謝の意を示して筆を置きたいと思う。